イナンナの冥界下り

シュメール神話『イナンナの冥界下り』を上演するための雑感を書くブログです。

エッセイ

【エッセイ】心と身体を結び、時空を超える声。神事としての合唱。(香西克章)

  8月から始まりましたイナンナWS

 次回 9/24で、2回目。来年2月迄全7回のWS、「心と身体を結び、時空を超える声」と題した”発声講座”です。

 声、毎日使うコミニュケーションツールですが、声ってなんだろう、身体と心から、どのように、どこへ発せられるのか?

 日本語の「こえ(声)」の語源は、”超える” 乞う” であり、漢字の「声」は、古代中国の神の声を呼ぶ楽器である”磬”(ケイ=)の形からできた! 現代の概念と異なり、「声」

は礼楽で用いられるものであり、現代のように人から人へのものではなく、人から神や霊に用いられたものであったようです。

  (礼楽=現在で言うなら、お経やレクイエムに近く、私が楽しんで音楽する、などと異なる)

 

  声を使い、歌うこと。それは目に見えない存在に向かい、声で超え、訴える(うったう=歌う)こと。世界的に稀有な芸能、能楽と同じように、対象は異界にあり、声や歌は、そこに向かいます。

洋の東西を問わず、本来 ”歌” は、礼楽でありました。ニーチェの”神は死んだ” また”産業革命”あたりから、理性が触れることができないものは、見えなくなったようです。我々は、トトロや真っ黒クロスケを見る力を失いました。で、本来の”聲”を失ったようです。

 「声」の旧字体である”聲”の文字には耳があります。声が身体から溢れるためには、聞こえにくい内なる音が聞こえる必要があります。空海の云う” 全てものには、音がある。その音を聞くことだ ”(『声字実相義』より) 、そしてその響きを聞くことができれば、身体から谺(こだま)するように、声がやってくるかもしれません。

  そんな声を取り戻すことで、私たちの身体も本来のつながりを取り戻し、その身体から溢れる声は、人から人へ、世界へ、異界へ、と、さらに沢山のものを結ぶことになるのではないでしょうか。

  耳と、そして発声器官が、人間を新たなフェーズにいざなう鍵のようです!

  身体の繋がりを知り、異界へ繋がる声を探す講座。自分の知らない身体と声に出会えるかも知れません。ワクワク……。

 

(こうざい・かつあき 指揮者。『イナンナの冥界下り』地謡頭)

★てんらいメルマガ第一号★

メルマガ「てんらい」第一号(文責:玉川奈々福)

 

 立秋が過ぎたものの、亜熱帯的蒸し暑さが続いております。

 てんらい会員の皆様には、お元気でお過ごしでいらっしゃいますでしょうか?

 

82日の「能と浪曲とチェロでつづる怖くない怪談 耳なし芳一」(於:雑司ヶ谷本浄寺)、そして3日の「怪談が結ぶふたりの文豪~小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)と夏目漱石~」(於:銀座・日本デザインセンター)が無事終了いたしました。猛暑の中、お運び頂きました方々に心よりお礼申し上げます。

 この二公演は、「イナンナプロジェクト」の一環で、能と浪曲と人形などのコラボレーションを、より完成度の高い、洗練されたものとするために、また伝統芸能のコラボレーションを、より多くの方々に見ていただくために企画したものです。

 台本はありますが、譜面や、段取りの打ち合わせなどはほとんどありません。

 日本の伝統芸能に携わる者は、相手の息や間合を感じながら、それに自分の体が反応していく、という技法を身に着けています。なので、その場その場の即興で音をつけたり、間合いをとったりしています。

 わたくし自身、「夢十夜」も「耳なし芳一」も、何度もやらせていただいておりますが、三味線については、譜面を一切とっておりませんので、前回自分がどう弾いたか、まったく覚えておりません。毎度、体が反応するままに弾いております。同じ演目でも毎回違う、そんな面白さを見る側の方々にも感じていただければと思っております。

 さて、これから「チーム・イナンナ」はいよいよ、1113日の、東京初演(於:セルリアンタワー能楽堂)にむけて始動します。

 お蔭様でご予約を早々に賜り、昼夜満席、キャンセル待ちになっております。

追って、2月公演、4月公演の情報も公開したく思っております。

 

その前に、イナンナプロジェクトの次なる弾は……! 今月より開催する多彩なワークショップです。これは、この企画の出演者たちも、互いの芸能の身体技法を学びあい、また、お客様にもさまざまな芸能の身体技法を学んでいただくことで、「伝統的身体」への理解を深めていただくために開催するものです。

 開催するワークショップは、以下の講座です。

 

●「能楽の謡と動き~神聖なる身体に目覚める~」

 講師:安田 登(やすだ・のぼる)

第一回 8月30日(日)1330

http://inanna.blog.jp/archives/1035296599.html

 

●「ダンスと柔らかいからだ~太古の動きを音から探る~」

 講師:蜜月稀葵(みづき・まれあ)

第一回 8月15日(土)@1930~銀座・カマレホウジュ

http://blog.livedoor.jp/jyako0305

 

●「発声講座  心と身体を結び、時空を超える声を!―合わせて7000年前の歌とともに!」

 講師:香西克章(こうざい・かつあき)

第一回 8月27日(木)19:0021:30@恵比寿・三田フレンズ 地下1階 2音楽室

http://inanna.blog.jp/archives/1036527564.html

 

●奈々福のガチンコ浪曲講座forイナンナの冥界くだり

――語り芸の王者・浪曲に隠された数々のテクニックをこの際、伝授――

 講師:玉川奈々福(たまがわ・ななふく)

第一回 8月28日(金)1900~@亀戸駅前 カメリアプラザ6F和室

http://inanna.blog.jp/archives/1035324896.html

 

●シュメール語で読む『イナンナの冥界下り』

 講師:高井啓介(たかい・けいすけ)

http://inanna.blog.jp/archives/1035563456.html

(日程は詳細未定)

 

 詳細未定のものは、決まり次第、こちらのblogで随時発表いたします。

http://inanna.blog.jp/

 

また、「てんらい」の会員も、随時募集しております。現在の会員数は67名様にお入りいただいております。今年度中のNPO法人化にむけて頑張っております。

http://inanna.blog.jp/archives/1033520801.html

 

 『イナンナの冥界下り』初演は、今年6月、那須の二期倶楽部においてでしたが、セルリアンタワー能楽堂は、場所柄も、舞台のつくりも違いますので、音楽、踊り、すべての面で、初演どおりにはなりません。また、小公演を通して、コラボレーションスキルもアップしていきます。公演ごとにバージョンアップしていくのをぜひとも追いかけてごらんいただきたく思っております。

 

【エッセイ】能面を打つ

奥津 健太郎

能面は日本の伝統芸能「能」で主にシテ(主役)が用いる仮面です。能役者は敬意を込めて「面(おもて)」と呼びます。また、面を制作すること、あるいは制作する人のことを「面打(めんうち)」といいます。

狂言の舞台を勤めながら面を打って十数年。能や狂言、面打の世界では「四十、五十は鼻垂小僧」といわれ、おこがましいのですが、面について感じたり、思ったりしたことを書いてみたいと思います。

「能面のような顔」―残念ながら能面は「無表情」の代名詞になってしまっています。確かに面は木彫ですから表情は動きません。殊に若い女面は鬼の面などと比べて凹凸が少なく、一見無表情にも見えます。しかし、能役者の顔に掛けられて舞台に出た面は驚くほど生き生きとして表情を変え、観客に様々な想いを語りかけてきます。

面を打つとき、生きた表情のために大切にしていることがあります。それは、面打の師の教えでもある「理に適う」ということです。私たちの顔には皮膚があります。その下には筋肉があり、その奥には頭蓋骨があります。これが大原則です。優れた面は、美しい女面でも恐ろしい鬼の面でもこの原則に従っています。頬の出っ張りは、僅かの狂いもなく頬骨のあるところに作られています。皺もただあるのではなく、表情筋の流れに沿って刻まれているのです。

良い面は舞台ではもちろん、面を打つときにも様々なことを教えてくれます。面打は多くを語ってくれる優れた古面に教えを乞い、導きを受けて新たな面を生み出します。能面と対話を重ね、その表情の秘密を探ることは大きな喜びです。対話が進まず、辛く苦しい時が続くこともしばしばですが・・・。

(おくつけんたろう 狂言役者・「てんらい」事務局長・『イナンナの冥界下り』ネティ役)

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