12月27日(火)の『イナンナの冥界下り』2016年冬バージョンの上演、一週間を切りました。

当日、みなさまにお配りするパンフレットのイラストを、浄土宗西山禅林寺派、京都瑞泉寺の僧侶にしてイラストレーターでもある中川学さんに描いていただきました。今回は、その図像の意味をシュメール語の高井啓介先生による解説でお届けします。

イナンナ3

▼ふたりの女神

この図像、パッと見ると、ふたりの女性が立っているのが見えますね。

これは天の女王イナンナ女神(左)と冥界の女王エレシュキガル女神(右)です。

ふたりが頭にちょっと変(!)な形の冠をかぶっています。これは「角冠」と呼ばれ、メソポタミアでは神を表現する一つの象徴と考えられています。

二人の神が手にしている、棒と縄、棒と輪は、物の長さを測る基準となるもので、神が世界にもたらす正義の象徴とされています。

では、ひとつひとつの図像を見ていくことにしましょう。

▼イナンナ

まずは、左側のイナンナ女神です。

イナンナ

彼女は、身にまとう「メ(神威)」の一つとして測り縄測り棒を両手に持っています。
 
頭の左側にキラキラと輝く星の三角形を数えてみると8つあります。これは八芒星金星の象徴です。女神イナンナは金星の女神でもあるのです。金星といえば英語でヴィーナス。そう、イナンナは後世、イシュタル、アプロディテ、ヴィーナス(ウェヌス)になります。

今回は狂言方(能楽師)の奥津健太郎が演じ、声は声楽家の辻康介が担当します。

▼ニンシュブル女神

ニンシュブル


イナンナ女神の左にひかえるのがニンシュブル女神。『イナンナの冥界下り』の中ではイナンナの大臣として登場します。彼女はイナンナが冥界で死んだあと、シュメール都市の神殿を巡り歩いて、イナンナを生き返らせて欲しいと神々たちに嘆願します。

演じるのは実験道場のJunko☆。声は玉川奈々福です。 

▼エレシュキガル

次に右側のエレシュキガル女神

エレシュキガル  QueenOfTheNightBW

冥界の女王エレシュキガルは大英博物館蔵の、有名な『天の女王(あるいは「夜の女王」)』と呼ばれるレリーフをモデルにしました。

足元に注目!足の指が人間のそれではありませんね。鳥の脚になっています。

彼女はイナンナのお姉さんなので、ちょっと上から目線。

エレシュキガルがその手に持つのは「棒」と「輪」を組み合わせたもので、支配権の象徴であるとも考えられています。

当日は、観世流シテ方の杉澤陽子が演じ、声は安田登が担当します。

▼門番ネティ神

ネティ

エレシュキガルの右側に控えるのがネティ神。鍵を持っていますね。彼は冥界の入り口にあるというガンゼル宮殿の七つの門を守る門番です。イナンナは七つの門をくぐるたびに、身にまとったメを一つずつ彼にはぎとられていくことになります。

七つの門ということで七体のネティが描かれています。

ネティを演じるのは実験道場の蛇澤多計彦、声は浪曲師の玉川太福です。

▼アヌンナ諸神

アヌンナ

右上にいる4柱の神々は、イナンナに「死の眼差し」を向け、弱い肉(死体)にしてしまう冥界の裁判官アヌンナ諸神です。本当は7柱なのですが、図像では4柱、本番では実験道場の方たちやコロス(合唱)の面々とたくさんの人がそれを演じます。

実験道場:我妻良樹、城ノ脇隆太、蛇澤桂佑、平田雅大
コロス:大島淑夫、大金智、金沢霞、笹目有花、高井啓介、塚田里香、中川義史、名和紀子、松山記子(五十音順)
 
▼2体の精霊

クルガラガラトゥル

イナンナとエレシュキガルの後ろに飛んでいる2体の精霊は「クルガラ」「ガラトゥル」エンキ大神が、冥界に行って戻らぬイナンナを助けるために、自身の爪の垢から作った精霊です。

イナンナの後ろにいるのがクルガラ。手には「命の草」を持っています。エレシュキガルの後ろにいるのがガラトゥル。手には「命の水」を抱えています。

二人はその羽で自由に冥界の門を越えていき、イナンナのもとにたどりつきます。そして二人が命の草と命の水をイナンナに振りかけるとき、イナンナはよみがえるのです。

舞台では二人の子方によって、クルガラとガラトゥルの動作が軽やかにそして爽やかに演じられます。

クルガラを奥津健一郎、ガラトゥルを笹目美煕が演じます。

▼ エンキ神

エンキ
 
イナンナとエレシュキガルの間には、上部に、エレシュキガルを象徴する冥界の月が描かれています。また、下部には、イナンナとされる金星(八芒星)が、文字を表現するのに使われた楔を使って見事に描き出されています。

an04
<楔形文字>

そして月と金星との間には合掌する神様が描かれています。

よく見ると肩から水が溢れ出ていますね。この神様は水を司るエンキ神。冥界で殺されてしまったイナンナを甦らせた知恵の神です。

▼音楽
当日の音楽は、能楽師笛方の槻宅聡に加えて、今回はなんと!音楽家・DJのヲノサトル他が担当。面白くなりますよ。
 
全体の監修や翻訳は高井啓介(大学教員・シュメール語講師)です。ちなみに高井先生はコロスとしても出演されます。

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残席、少しになりました。お申し込みはお早めに!

■日時 12月27日(火)18時15分開場 19時開演
■場所 セルリアンタワー能楽堂(渋谷駅より徒歩5分)
■料金 全席自由5,000円(てんらい会員は1,000円引き)
   ※指定ご希望の方は1,000円にて承ります。
■予約 てんらい事務局 event@inana.tokyo.jp 080-5520-1133(9時~20時)