シュメール語のワークショップの第三回目が11月30日(月)に無事終了しました。会場は今回も塚田有一さんのお花のスタジオ(リム・グリーン)が入っている東方學會ビル(神保町)の2F会議室でした。

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出席者は26名程度だったでしょうか。先月は女神イナンナに焦点を当てましたが、今回はそのおつきの神様ニンシュブルさんが主人公でした。

シュメール語のワークショップは毎回三部構成になっています。
(1)今日の主人公について簡単なレクチャー
(2)今日のフレーズを楔形文字で粘土に刻む
(3)舞台『イナンナの冥界下り』の台本のもとになったテキストと単語帳を使って文法を学ぶ

今回もそういう感じで進行しました。

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『イナンナの冥界下り』ではニンシュブルはとても重要な役割を持っています。イナンナは冥界に下る前に、自分が帰らなかった場合に何をすれば良いのかをニンシュブルに伝えておきます。大神たちのもとを巡り、最後に大神エンキに助けを乞うようにと言い残して冥界へ向かいます。ニンシュブルはそれを守って、のちに大神たちのもとを巡って、最後の最後にエンキからイナンナをよみがえらせる秘策を授かることになるのです。

『イナンナとエンキ』という神話のなかには、イナンナが七つのメをはじめとするたくさんのメをどうやって手に入れたかが書かれています。メはディルムンにあるエアブズ神殿にエンキが大事に保管していたのですが、イナンナはメがどうしても欲しくてたまらなくなり、あるときエンキを訪ねていって、宴会になり、酔っていい気分になったエンキから、メを全部もらってきてしまいます。イナンナは天の船アマンナにたくさんのメを乗せてウルクに戻ろうとします。酔いからさめて事の重大さに気づいたエンキは、おつきの神イシュムにイナンナを追わせ、メを取り返そうとするのですが、そのときにイナンナのために戦ってメを守ったのがニンシュブルでした。冥界に赴くときにイナンナが身につけたメは、こうしてニンシュブルが死守したメのうちの七つだったのかもしれません。

ニンシュブルが果たしていた役回りは、アッカド語の『イシュタルの冥界下り』ではパプスッカルという男性の神にとって変わられます。女神であったニンシュブルは後の時代にパプスッカルやイラブラトといった男神と同一視されるようになっていきます。このあたりもとても興味深いところです。

などなどをつらつらとお話ししてニンシュブル女神をご紹介しました。


そして第二部。シュメール語ワークショップが一番盛り上がるとき、楔形文字を刻む時間になりました。
今日のフレーズはこれ。

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ga-nu sukkal ~ は、イナンナが『ニンシュブルよ、こっちに来なさい!』と呼びかける場面に、歌手の辻康介さんが歌いあげるフレーズです。

でいきなり、これを書くのですが、楔形文字3回目にして、全部で3行、26文字といういきなりの難関です。細かい楔もたくさんありますし大変かもしれないと思いましたが、これだけの文字を書いていくと、楔形文字を書くということに間違いなく手が慣れていくのだなとわたしは感心してみなさんの粘土を見て回っておりました。

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ちなみに今回のはるき君の楔形文字アートは、「バッハ!」だそうです。小澤征爾さんではなくて、「バッハ!」だそうです。

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実は「バッハ!」以上に、はるきくんの楔の形の入り方とてもいいなあ、なんだか当時の書記っぽいなあと思って眺めておりました。四本の楔が斜めに入って重なるあたりがとてもとてもそれっぽいです。次回のワークショップでは、当時の書記たちが実際に書いたいろんな粘土板を見比べてみたいと思います。

そうそう必ず最後に携帯で粘土板の写真を撮ってみてくださいね。肉眼で見るのとは違い、陰影がくっきり入りますので、とてもとても上手に写真に写りますから。これは絶対にそうなります。

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最後に、女性のことばであるエメサル、名詞のあとにつく接尾代名詞、
文章がそこで終わる動詞の使い方と、次の文につながっていく動詞の使い方など
文法について考えてワークショップは終了しました。


来月のワークショップは12月21日(月)に同じ会場にて。
ご予約は、和と輪 info@watowa.net まで。

次回の主人公は、冥界の門番ネティ、その他にも冥界のいろんな住民たちについて考えます。
そして楔形文字本文からネティが登場するテキストを解読してもみようかななどともちらっと考えております。
どうぞ次回もよろしくお願いいたします。