北風が冷たい季節になりました。今年も残すところあとひと月!

 みなさま、お元気でお過ごしでいらっしゃいますでしょうか。

 1113日、「イナンナの冥界下り」第一回東京公演、セルリアンタワー能楽堂において昼夜公演、無事に終えることができました。

これも、会員の方々のお力添えによるところが大きく、心よりお礼申し上げます。

能楽堂という特殊な空間で、蝋燭能で行いました。

 

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能楽堂ならではの作法もあり、制限も素晴らしさもある中で、能楽以外の出演者たちにとっては大変貴重な経験となりました。

 多くの方からご感想をいただきました。それに励まされ、また考えさせられてもおります。

 なにせ、5000年前の神話を、この現代に現出させようという試みです。

 常に未完成であり、常に方法を探り、進化し続けていきたい……この演目は、いわゆる「劇場」では上演しません。演じる「場」により、この神話はさまざまに変化していきますので、どうか今後もお付き合いいただきたいと思っております。

 

公演当日、会員の方々には、安田登著『イナンナの冥界下り』(ミシマ社刊)をお配りいたしました。まだお手元に届いていないという方は、事務局にお申し出くださいませ。

イナンナ本

 さて、イナンナプロジェクトは、引き続き多彩なワークショップを行いつつ、次の公演への準備を進めております。

 次の公演は、「イナンナの冥界下り」@日本デザインセンター(銀座)です。

 デザイナーの原研哉さん率いる「日本デザインセンター」は、銀座四丁目の大きなビルの中にあります。13階のPOLYLOGUEはコンクリート打ちっぱなしの、フラットな空間。能楽堂とは正反対のような場所です。そこで、限定100名様に、ぺたんと桟敷にお座りいただいての公演です。客席と舞台とを明確にわけず、まるで祭りの場に紛れ込んでしまったような感覚でご覧いただける公演にしたく思っております。

12月1日からご予約を開始いたします。ご予約時に、会員であることをお伝えください。会員値段になります。チケットはご送付せず、当日受付での精算となります。定員に達し次第、締め切りとなりますので、ご了承くださいませ。

 

「イナンナの冥界下り」@日本デザインセンター公演

2月16日(火)18時半開場 19時開演

場所:日本デザインセンター13POLYLOGUE(中央区銀座4-13 銀座4丁目タワー13F 東京メトロ銀座駅、東京メトロ・都営地下鉄東銀座駅より徒歩すぐ)

全席自由(限定100名様) 予約5000円 当日5500

(学生、てんらい会員はそれぞれ1000円引き)

予約:イナンナプロジェクト事務局 event@inana.tokyo.jp 080-5520-1133

(9時~20時)

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 そして、さらに次なる公演も3月にあります。

 泉鏡花原作「海神別荘」。

 泉鏡花の幻想戯曲三部作の中で最高傑作と言われ、上演困難とされた作品です。それをこのたびも、能・狂言・浪曲・人形・語り……等の伝統芸能の身体を用いたコラボレーションで上演します。海の底深く、琅玕殿を治める麗しき公子。彼の見初めた美女が、人間界から輿入れしてくることとなった……という、大変幻想的な世界です。

 これについては、亀戸駅前の「カメリアホール」という劇場で上演いたします。

 【主な出演者】

公子 安田登(能楽師 下掛宝生流ワキ方)

沖の僧都 奥津健太郎(能楽師 和泉流狂言方)

美女 飯田美千香(人形師。百鬼ゆめひな)

侍女 蜜月稀葵(ダンサー)

美女の声 玉川奈々福(浪曲師)

笛 槻宅聡(能楽師 森田流笛方)

チェロ 新井光子(チェリスト)

泉鏡花 東雅夫(アンソロジスト、文芸評論家) 他。

 

 1210日よりご予約を開始いたします。

この公演につきましては、一般のお客様は、カメリアホール(03-5626-2121)へお申し込みくださいませ。

インターネット予約もあります。

http://www.kcf.or.jp/kameido/concert_detail_010500300307.html

会員様につきましては、事務局のほうにお申込みくださいませ。会員価格で1000円引きになります。

全席指定となりますので、ご希望を添えて、お申し込みください。

入場料のお振込みをいただいたのを確認後、チケットを事務局より発送させていただきます。

 

「海神別荘」@カメリアホール公演

2016年3月5日(土)1430開場 1500開演 亀戸・カメリアホール(JR総武線で秋葉原から4駅8分「亀戸」駅下車 北口徒歩2分)

入場料:全席指定 予約5000円 当日5500

(学生・てんらい会員は1000円引き) 

予約:イナンナプロジェクト事務局 event@inana.tokyo.jp 080-5520-1133

チラシ案表2 (2)

 

【エッセイ】蜜月稀葵


先日の能楽堂での公演では本当にありがとうございました。

沢山の皆様に支えられまして、無事に終える事ができました。

心から感謝申し上げます。

 

2014年に『御息』という作品を発表しました。”吸う息は神の御息、吐く息は御魂の御息”というサブタイトルで、私は”天と地”を行き来する存在として踊り、大いなる存在を「ただ一つのワタシ」と表現し、儀礼的な要素を散りばめてクリエイションを致しました。

その後にシュメールの女神イナンナが冥界に行くという舞台の話を頂き、何か不思議な流れを感じました。

そんなスタートでした。

 

 

『イナンナの冥界下り』はまったく自分の物差しでは図る事のできない作品で、山のシューレでの初演稽古はただただ必死。一つ一つを確かめながら積み上げた記憶がございます。

何がイイのかワルイのか、、。

通常の私のクリエイションは、立体的な白紙をどう埋めていくか、からはじまり、音楽、身体の形、空気の流れ、密度を見ていき、それに身体の動かし方で時間をコントロールして景を構築していきます。

が、こういった方法が全く使えず、、、とにかくやるしかないな、、と思ったのを覚えています。

さらに舞台上だけでなく楽屋作法等々に至るまでもが真新しく。。本当に幅広く学ぶ事ができました。

 

 

・・・・・・

 

 

沈黙から

すっと立ち

遠くのなにかに引かれている

旋回

体液への影響

手は天と地

 

これは、私が踊り始める時のイメージです。

能楽堂でのイナンナの動きは、これに強度と速度が数倍加算された状態で出てきました。

普段のダンスでは役になる事はほぼなく、ただ器となり音や場所の情報を通す事で踊っていますが、この作品で初めて役のフィルターを使いました。

役のフィルターを通すと全く予期しない方向に身体が進み、体感をしてみないとわからない事だらけになりました。全てが新しい体験でした。

 

 

『イナンナの冥界下り』はどんどん進化していく作品だそうです。(実際にそうでしたね!)

内容もさることながら、関わって下さる皆様や樹状に展開していく沢山の出来事、まるで小川が大河へ成長しているように思えます。最初に感じた流れがどんどんと先を伸ばし広がっていきます。

皆様からの声や新しい展開の話を耳にする度に日々精進を怠らず成長しつづけないといけないなと思いなおします。ダンサーは毎日の稽古が本当に大切ですからね。

楽しんで毎日稽古がんばりたいと思います。

 

そして、最後になってしまいましたが、毎回の新しい『イナンナの冥界下り』と広がり続ける出来事を皆様と一緒に楽しんでいけたら幸せに思います。

 

 

(みづき・まれあ ダンサー)