イナンナの冥界下り

シュメール神話『イナンナの冥界下り』を上演するための雑感を書くブログです。

ご来場、ありがとうございました!

2015年11月13日(金)、セルリアンタワー能楽堂で『イナンナの冥界下り』の第一回東京公演が行われました。

ご来場、いただきました皆さま、本当にありがとうございました。

さて、本当はここで報告もかねたブログを書きたいところなのですが、私(安田)は今日も舞台で長野県の小布施に来ております。

明日(月)は銚子の小学校で授業、明後日(火)は午前に木曜日の舞台の申合せ(リハーサル) があり、夜は広尾で寺子屋、その次の日(水)は銚子で寺子屋、そして木曜日は舞台(梅若研能会)、金曜日も大田区の小学校での授業があり、夕方は土曜の舞台の打ち合わせ、で、土曜日は喜多能楽堂で舞台があり、日曜からは帯広…というスケジュールで、なかなか書いている時間がありません。

隙間の時間を見つけて書いていきます。

しばらくお待ちください。 

メルマガ「てんらい」第三号(文責:玉川奈々福)

日ごとに涼しくなる季節。

てんらい会員の皆様には、お元気でお過ごしでいらっしゃいますでしょうか?

1113日の「イナンナの冥界下り」セルリアンタワー能楽堂公演、いよいよ明日に迫りました!!!

昨日は能楽堂で最終の申し合わせ(ゲネプロ)!!!

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初演の二期倶楽部の場所とは、広さも高さも違うので、新たに振付をしなおしたり、フォーメーションを変えたり。舞台装置も変わります。

また出演者にも若干の異動があり、地謡の人数が増え、子方も、初演時は一人でしたが、今回は二人入ります。

初演時から参加の子方、笹目はるきくんに加えて、もう一人の子方は、奥津健一郎くん。ネティ役、狂言の奥津健太郎さんのご子息で、すでに狂言師として活躍し ておられます。はるきくんとともに、妖精のクルガラ・ガラトゥルを演じます。この二人の躍動感ある舞は、今回のみどころの一つです。

毎度お稽古しながら、これはジャンルわけ不能の作品だなあと感じます。その作品に、早くから多くのご予約をいただき、あっというまに昼夜がいっぱいになりました。

6月の初演とは、まるで新しい作品になるような感じですが、どんな場になるか、演者それぞれが力を注ぎ、場をつくります。

 

また、2月公演、4月公演の日にちが決定いたしました。

2月は16日、銀座・デザインセンターにて。

4月は13日、浅草・西徳寺さんにて。

チケット発売については、決まり次第、お知らせをいたします。

 また、「能楽」「ダンス」「発声」「シュメール語」「浪曲」の各ワークショップも大勢様のご参加をいただいております。

 日程の詳細は、こちらのblogにて随時お知らせしております。

 

 

 

「無意識の大海になる~能楽堂公演に向けて~」安田登

『イナンナの冥界下り』の第一回東京公演が、いよいよ来る1113日(金)にセルリアンタワー能楽堂(渋谷区)で行われます。

 

現 在読み得る世界最古の神話のひとつである『イナンナの冥界下り』は、おそらくは古代の語り部たちによって「祀りの場(にわ)」で語られた作品だったのでは ないでしょうか。平安時代の有職故実書である『江家次第』には大嘗祭における語り部たちの声は「其音似祝、又渉哥声」と書かれています。『イナンナの冥界 下り』の語り部たちも同じく歌うような、また祝詞のような声で神話を語ったのでしょう。

 そのような物語を上演するには能楽堂というのは最高の場所です。

 

▼能楽堂で無意識の大海になる

能楽堂というのは不思議な空間です。

フランスの劇作家ポール・クローデルは、能の舞台を「客席の海に迫り出している舞台」と表現しました。そして能の物語はその舞台の上ではなく「すべてが観客の内部で進行する」と書いています。

能の舞台は海に浮かぶ小島のように客席の中にぽつんと存在しています。この舞台構造によって、能の舞台と観客とは互いに入り込み合い、そしてその結果、能の物語は舞台の上ではなく「すべてが観客の内部で進行する」ようになるのです。

能 楽堂の客席に座ったとき、観客はいわゆる「客」ではなく、能という物語を構成する「海」、すなわち物語の無意識の一部となります。そして、「橋掛かり」と 呼ばれる長い廊下を伝って遠い隠世(かくりよ)から現われる何者か等が、その無意識に浸入し、ともに神話の世界に入っていくのです。

というわけで、この公演では舞台を「観る」なんて姿勢はすっぱりと捨て、この神話の共演者、共犯者になってください。

 

▼半覚半睡でどうぞ~

さて、今回はできるだけ原作に忠実に上演します。

…ということは「長い」ということです。なんといっても古代人の時間感覚ですから。

そして、蝋燭能で行います。

…ということは「暗い」ということです。

長くて、暗い。寝ちゃうかも知れません。でも、その半覚半睡の状態こそ無意識の海です。本当に寝ちゃうのはもったいないですが、半覚半睡はむしろ歓迎すべきことです。

どうぞ気楽に、そして怪しくお楽しみください。

 

なお、この作品は、今回の能楽堂公演を皮切りに、日本デザインセンター(2月16日)、西徳寺(4月13日)で公演を行う予定です。劇場以外での公演を中心に行っていこうと考えています。また、毎回、趣向が変わります。音楽も台本も変っていきます。

何度もお運びいたければ幸せ、これに過ぎたることはございません。

祀りの場(にわ)ですので、本当はお酒でも飲みながら、また焚き火でも囲みながらの上演がいいので、いつかそういう上演もしたいなと(秘かに)思っております。ちなみにシュメールのお酒は麦酒です。

(やすだ・のぼる 下掛宝生流ワキ方)

 

 

「イナンナと我らの地獄下り」槻宅聡

 「地獄下り」を重要な主題としている詩人、入沢康夫をご存知でしょうか。代表作の一つ、『わが出雲・わが鎮魂』の「あとがき」で詩人はこんなことを言っています。

   現実の出雲が私の意識にとって一種の大切な「地獄」であるように、この『わが出雲・わが鎮魂』は、これまた一種の「地獄下り」の体験として、忘れたくても忘れられぬ苦い思い出になるのではないかと思っている。

出 雲とは松江市を中心とする島根県東部地域の総称。入沢さんは島根県松江市の生まれで、隣接する安来市出身の私にとって同郷の先輩です。出雲地方出身者が皆 同じように感じているわけではないと思いますが、出雲が「大切な地獄」であるとは、入沢さんと私の共通した実感です。同じ「あとがき」でも述べられている ように、入沢さんは松江市の生まれではありますが一家は別の場所から移り住んで来られた由で「半ば他処者、半ば土地っ子」という境遇だったようです。出雲 は保守的・閉鎖的な土地柄ですから苦労があったことでしょう。生え抜きの土地っ子である私でさえ、この面には閉口することがあります。また出雲は「神話・ 伝説の土地」としてもよく知られていますが、観光宣伝用の口実として語られることがほとんどで、土地の人は必ずしも神話や伝説に親しんでいるわけではあり ません。こんなところに対する入沢さんの苛立ち、愛憎両面が『わが出雲・わが鎮魂』には垣間見えます。

 しかしまた「現実の出雲」そして「一種の大切な『地獄』」という留保付きの表現を見逃してはなりません。地獄下りのもう一つの面は、創作に関わる姿勢なのです。

入 沢さんは「詩は表現ではない」と力説します。これは「詩の作品は、作者があらかじめ抱いたしかじかの感慨や印象を、読者に伝達するための手段ではない」と いう意味です。詩人も読者も、詩を書く・読むことを通じて何かを発見する、そんな意味生産の「現場」が詩作品なのだ、というのです。そこは根源的な何かが 不可欠です。それを見いだすために行う「地獄下り」は、出自などの個人性(現実の出雲)を絡めながら、集合的無意識の領域(神話)に踏み込んで、あえて自 らを危地に追いやることが必要なのです。

能 楽師たる私にとって「地獄」とは、言うまでも無く、能楽の舞台であり作品であり、実演です。舞台から楽屋へ引き上げてきたとき、舞台上で何が起きていたか 記憶がないこともしばしばあるのはトランス状態に近いからかもしれません。耐えがたい足の痛み、周囲から押し寄せる声と音響のエネルギー、視線のストレ ス、これらの中で見え隠れする何かを一瞬とらえることができたとき、それは必ずや自分一人に起きているのではなく、共演者や観客席の人々と共有しているは ずだ、そんな確信があります。ですからもちろん能楽を観るという行為もまた、入沢さんが言うような意味生産の行為に他なりません。

さて、『イナンナの冥界下り』で共演する私たち、ご覧になるお客様にはどんな地獄が待ち構えているのでしょうか。ふるいつきたくなるほどの憧れと、むかつく嫌悪を抱きながら、心うち震えて歩みをすすめることにいたしましょう。                                      (つきたく・さとし 能楽師 森田流笛方)

ガチン浪曲講座第三回@カメリアプラザ和室2015/10/29(玉川奈々福)

参加者27名。今回も啖呵のお稽古から始まります。

 初回のお題は「ああなりまして、こうなって、こうこうしかじかで、こうなった」。

二回目のお題は「江戸は神田お玉が池、北辰一刀流の道場を開いております、千葉周作の門弟、平手造酒」

……でありました。こう書いただけでは、いったいどこが難しいのか、どういうお稽古をしているのか、わからないでしょうねえ、うふふ。

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 これを、みなさん、息もたえだえになるほど、腹の力を振り絞って、言う稽古をするのです。第三回目はその復習から入りました。

 そして、第三回目の新しい課題は、「ちょうど時間となりました」です。

 語り芸の間合い、挨拶一つで、人を引き込む呼吸のことなどをお話し、実際にやっていただきました。

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 まずはご挨拶から。

「ご来場賜りまして、あつく、お礼申し上げます。○○○○(自分の名前)と申します。演題は、『阿漕が浦』お時間まで!」……これを、ぎゅうぎゅう聴衆を引っ張りながら言えるか。

 そして、啖呵をつづけて行ったところで、絶妙の間で「ちょうど時間……」を入れる。

 浪曲の、始まりと、終わりの形をつける稽古。これが語り芸の極意です。

 度胸をつけるために。一人一人、舞台でやってみてもらいました。目の配り、身のこなしの稽古でもある。

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 そして、私の三味線と、沢村豊子師匠に弟子入りしたばかりの典子さんの三味線で、外題づけ(浪曲の、一番最初の節)のひとふしを、うなってみるお稽古。

 さあ、どんどんディープな浪花節世界に入っていきます。次回からは、どっぷり節のお稽古です!

シュメール語ワークショップ第2回(1):イナンナプロジェクト

高井啓介先生よるシュメール語ワークショップの第2回目が10月26日(月)に東方会館で開かれました。お花の塚田有一さんのリム・グリーンが入っている神保町の素敵な建物です。

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参加者36名。東方会館の会議室がぎゅうぎゅうでした。 シュメール語の講座にこんなに人が集まるのって、考えてみると不思議です。これほど「実用的ではない(失礼)」講座もちょっとないのに(笑)。

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前回はイントロでしたが、これからは毎回、ひとりの人物に焦点を当てて読んで行くということで、今回のテーマは主人公である「女神イナンナ」。イナンナとともに、シュメール語の世界に旅立ちます。

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▼イナンナとはどんな神か

最初にイナンナとはどんな神様かというお話。詳細は後日にまとめますが、テーマとしては…

・女神イナンナ/イシュタル
 天の女主人であるイナンナ

・戦闘の女神

・愛と豊穣の女神

・さまざまな「メ」を神エンキから手に入れたイナンナ
 メとは神の掟、太古から神々によって定められた規範。具体的なものも、抽象的なものもある。

・そんなイナンナが冥界に下る

…などでした。

シュメールの図像ではライオン(随獣)に足をかけ、剣を持ち、星辰状の光背を有し、翼がある女神として描かれます。 また、楔形文字などでは「葦の束」として描かれます(白丸で囲ったのは安田)。

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イラン戦争のどさくさで一度、盗難にあったけど、戻ってきたウルクの大杯(紀元前3,000年頃)については、各段ごとに詳しい説明をしていただきました。でも、この黒板ってどうよ、って感じでしょ。楔形文字やら図像やら。もう楽しすぎます。

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※講義の詳細については、後日まとめます。

▼楔形文字を刻む

講義のあとは粘土板に楔形文字を刻ました。

初めての方も(そして、前回のことを忘れてしまった方も)いらっしゃったので、芦ペンの使い方からもう一度、教えてくださいました。

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まずは粘土をつぶして板(タブレット)状にします。粘土のつぶし方は人によってそれぞれ。最年少のはるき君はまたどんどん叩いてつぶします。

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楔形文字の「楔」には5種類ある。最後のがちょっと難しい。
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今回、粘土板に刻むのはこれ、難易度高いですね。
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お友だち同士、親子、ひとりで黙々と、この難しい楔形文字を刻むことに挑戦中。そしてはじめての人には高井先生が個人指導。
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ちなみにはるき君は、世界で初となる「楔形文字アート」も開発していました。ドラえもんを楔形文字で書いて(描いて)いたのです(最下部に注目)。むろん、その上にはちゃんと楔形文字も書かれています。

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※これは「Arika」さんのツイートから持ってきちゃいました。もとのツイートはこちらです→

…なんてやっているうちに、かなりの作品が出来上がりました。前回、高井先生が「まじめに出ていると(楔形文字の)書記として食べていけるようになります」とおっしゃってましたが、タイムマシンができればあながちそれも夢ではないかと…。

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<続く>

※ちなみに次回の講座は11月30日(土)です。

庭を読む<六義園>伝統芸能パースペクティブ第3回

▼見えないものを見る力と「和歌」

今回は『イナンナの冥界下り』とはちょっと違った話題で失礼します。

演劇やダンス、音楽などの舞台芸術に関わる方、あるいは日本文化に興味のある方、そしてARやVR、さらにはゲーム制作などに携われる方などに、ぜひ参加していただきたい催しがあるので紹介します。平日の昼で参加しにくいのですが、このメンバーでの講座は、なかなかないのでぜひ万障繰り合わせてのご参加をお待ちしています。

11月9日(月)10:00~17:00 無料(要予約)

詳細のページはこちらにあります

これは、アーツカウンシル東京主催の「伝統芸能パースペクティブ」という催しの第三回目で、今回は「庭を読む」という講座です。

午前に2時間のレクチャーがあり、午後、駒込の「六義(りくぎ)園」を周り、そのあとまた2時間のレクチャーがあるという長時間講座です。 

紀ノ川


レクチャーをされるのは…

・和歌:鈴木宏子先生[日本古典文学 平安文学 和歌文学/千葉大学教育学部教授]

・VR・脳科学:藤井直敬先生[脳科学/理化学研究所 脳科学総合研究センター 適応知性研究チーム・チームリーダー]

・座談進行:船曳建夫先生[文化人類学/東京大学名誉教授]

・そして安田登

…という超豪華メンバーです。 

さらに六義(りくぎ)園の散策時には、お花の塚田有一さんが庭内にいて、みなさんの質問に答えてくれます。また最後に安田が『夢十夜』を語りますが、そのときには浪曲師の玉川奈々福さんが演奏もしてくださいます。 

この講座でお伝えしたいのは「見えないものを見る力」と、そしてそれを支える「和歌」についてです。

能という芸能は、いわゆる大道具、小道具の類はほとんど使わず、照明も音響も使いません。多くを観客の想像力にゆだねるという芸能なのです。これは能に限らず、多くの古代の芸能がそうでした。これは古代の人たちの想像力が今の私たちよりも豊かであったということもあるでしょうが、しかし能という芸能の中にその仕掛けが隠されていることも見逃すことはできません。

そういう仕掛けについてもお話をしながら、これからの芸術・芸能の方向性を考え、さらにそれを生み出す脳の働きについてもお話が及ぶ予定です。

▼六義園の石柱はARマーカーだ

そしてメインとなる「六義(りくぎ)園」の散策です。

庭園は「日本文化の粋」ともいわれ、日本文化の中でも最も重要なもののひとつです。

しかし、正直いって、僕は若いころからそのよさがよくわかりませんでした。落ち着くといえば落ち着くし、きれいといえばきれいです。でも、だからといってこれが「日本文化の粋」とはとても思えない。

日本の庭に関する本も何冊か読んでみました。現代の本だけでなく『作庭記』だって読みました。それでも、その(それほどの)よさはわかりませんでした。

しかし、わからないのは当たり前だったのです。日本の庭は、目や心だけで鑑賞するものでなく、そこにある暗号を読み解き、それを脳内で拡充し、そしてはじめて味わえるものだったのです。

「見えないものを見る」「聞こえない音を聞く」、すなわち脳内ARそんな日本文化を享受する人たちのトレーニングの場でもあり、それができたとき、日本の庭は3Dどころか4Dにも5Dにも6Dにも変容する空間なのです。

今回の「庭を読む<六義園>」の講座は、そんな庭の読み方のためのお話をさまざまな立場の専門家がし、また実際に駒込にある大名庭園である「六義園」を歩いていただきます。

六義園は江戸時代、五代将軍、綱吉の時代に、柳沢吉保によって駒込に作られた「大名庭園」です。大名庭園は、「見えないものを見る力」を養うために作られたのではないかと思われるほど、その練習には最適なのです。

東京ドーム二個分ぐらいの大きさの庭園の中に、紀伊の国の名所が再現されています。和歌の名所で名高い「和歌浦」と、花の名所の「吉野山」が中心です。

庭園内には名所の名が刻まれた数十センチの石碑が立っていて、これらの多くが和歌と呼応しています。

千鳥橋 石柱    志るへの岡 石柱


これは、現代の言葉でいえばARマーカーのような機能を果たしているのです。

いまだったら、これにスマホや携帯をかざすと、AR(Augmented Reality:拡張現実)のアプリが起動して、この景色に、いまここにはない景色を重ねたり、音を出したりします。

▼脳内ARを発動する

たとえば「でしをのみなと(出汐湊)」という名が書かれた石碑があり、その前に立ったとします。

するとそのARマーカーに刺激されて、その人の脳内ARが発動して、まずは次のような和歌が浮かびます。

「和哥の浦に月の出汐のさすままに夜鳴く鶴の声ぞさびしき」

(和歌山県の和歌の浦から船出をしようと、月の出を待っている。やがて夜になると月が出てくる。それにつれて潮も満ちてくる。船出の時だ。が、海水に浸入しされた干潟にいた鶴たちが、そこにはいられなくなって夜の空に飛び立ち、さびしい鳴き声をあげている)

目の前には和歌浦を模した景色があります(真ん中に小さく見えるのが石柱です)。

和歌ノ浦1


発動した脳内ARは目の前の景色を拡大・拡張し、実際の和歌浦ほどの大きさにするし、不足部分を補う。実際に和歌浦に行ったとか、そういうことはどうでもいいのです。自分の好きな和歌浦に脳内で作り変えます。

そして、かりにいまが昼であってもそこは夜になる。やがて、月が出てくるとともに、静かな水が動いて潮も満ちてくる。汐待ちをしていた船が湊を出ていくさまも見える。

いままでの干潟に水が満ちてくるので、そこにいた鶴の群れが葦原を目指して飛び立ち、悲しそうな鳴き声を中空であげる、そんなイメージが浮かんできます。

このイメージを浮かべる人のほとんどは実際の和歌浦に行ったことがない人なので、おのおの勝手な妄想を立ち上げるのです。しかも、それが目の前の上の景色に重なるのです。

▼時空を超えた脳内AR
 
また紀の川を模した「紀川」という石碑では、それこそ脳内でしかできないARを立ち上げます。

紀乃川 石柱(遠景)


この紀の川は、別名「吉野川」とも呼ばれるように、ここは六義園の二大名勝、和歌浦と吉野山をつなぐ川です。

この石碑で脳内に浮かべるべき句は『万葉集』の代表歌人である人丸の句です。そして、紀ノ川は『古今和歌集』の歌人である紀貫之

すなわちここは和歌浦と吉野山という空間を結びつけるだけでなく、奈良時代の『万葉集』と平安時代の『古今集』とを結びつける、時間をも結び付ける川なのです。

この時空間を超越したものといえば、この庭園ができた当時(綱吉の時代)の人ならば必ず能『高砂』が思い出されたはずです。能『高砂』のおじいさんは住之江(大阪)の人、そしておばあさんは高砂(兵庫)の人で、さらにはおじいさんは『万葉集』の奈良時代の人で、おばあさんは『古今和歌集』の平安時代の人なのです。

そんな時空間を越えた二人が、相生の夫婦であるというのが能『高砂』です。まさに「紀の川」。

高砂


そして、それを思い出した当時の武士が能『高砂』の謡、「高砂や…月もろともに出汐の」を口ずさんだ途端に、対岸にある石碑「出汐湊」が見えて、「おお!」と、謡の「出汐」が出汐湊の「出汐」と呼応することにも気づいたはずなのです。

▼観る人にゆだねる勇気

こんな脳内ARのためのARマーカーである石碑は、いまは立ち入り禁止の場所もあるので、現在確認できるものは十六個しかありませんが、本来は八八個ありました。

六義園は、そういう脳内AR、すなわち見立てのために仕掛けられた庭園なのです。

それができないと、ただ「わー、きれいだね」で終わってしまう。まあ「わー、きれいだね」で終わってもいいんですが、いろいろな古典を知っていれば、見えるものや考えることがまったく違ってきます。
 
しかし、日本文化で大事なのは「こんな景色を見なさい」というマニュアル的なものはない。方向性はあるのですが、そこで何を見るかはその人にゆだねられています。

これは、能作者が、自作の能をこんな方向で理解してほしいと観る人に強要しないのと同じだと思うんです。いろいろなアイテムをぽんぽん曲の中に投げ入れるけれど、何を拾っていくかは観る人まかせ。観ている人のその時の精神状況、その時の教養によってまったく異なります。

それを相手にゆだねるという勇気があったのが日本文化でした。

▼ハコスコもあるよ~

…なんていう話を中心に、僕はお話をする予定ですが、鈴木先生の和歌のお話 、藤井先生のVRや脳科学のお話、そしてそれらをつなげてくださる船曳先生のお話も楽しみです。

ちなみに当日は藤井先生のハコスコもいくつか展示され、みなさまにVR体験をしていただけるようにする予定です。

ぜひ~。

詳細のページはこちらに

ダンスワークショップ 第三回ご報告(蜜月稀葵)

身体をしなやかに使う体操 part 2 ~上半身、背骨、骨盤、踵~

○前回の復習
 地球を踏みしめて、森ちゃんのタイコに合わせてパラレルプリエプリエプリエ!

○上半身の体操
・肩甲骨剥がし(飛龍会メソッド)
・肩の抵抗運動(飛龍会メソッド)で上半身をエアリーに仕上げました。
・肘の体操
・肘の回転運動からの舞
・上半身を使った連続運動を森ちゃんのタイコに合わせて

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○シュメール語とダンス
・儀礼に必要な要素を読み取る
 なぜ儀礼には音楽と舞がセットなのか。。。そんな事を皆様と考えてみました。

○「グド」 gu4-ud to dance をダンスに
コロスの皆様が数名ご参加下さいましたので、香西さんとイナンナ賛歌をうたって頂きました。





次回は、11月22日(日)17:00~19:00(2H)
身体をしなやかに使う体操 ~連続した体操から簡単なダンス~ から、シュメール語でダンスしてみたいと思います。

ご予約
camale.info@gmail.com
080-7952-6709

10月のワークショップ

10月のイナンナ・ワークショップです。すでに満席のワークショップもございますのでご注意ください。

●ダンスワークショップ
10月18日(日)  17:00-19:00
講師:蜜月稀葵
第3回:身体をしなやかに使う体操 part 2 上半身、背骨、肋骨、肩、肩甲骨
会場:銀座・カマレホウジュ
基準受講料:2,000円
予約:カマレホウジュ 080 7952 6709 camale.info@gmail.com

●発声ワークショップ
10月22日(木)  19:00-21:30
講師:香西克章
第3回:体幹(胸 背中 腰 肺 横隔膜 骨盤底筋群 腹筋群 大腰筋などに、焦点をあてます。
会場:三田フレンズ
基準受講料:2,500円
連絡先
katsuaki-1963-g.gould@i.softbank.jp

●シュメール語ワークショップ
10/26(月)  19:00-21:00
講師:高井啓介
会場:東方会館(神保町)
基準受講料:2,000円
第2回:イナンナに焦点を当てて
連絡先:info@watowa.net 
※前回受講された方のみで満席(キャンセルがあればお入りいただけます)

●能楽ワークショップ
10月28日(水)  19:00-21:00
講師:安田登
会場:場所:中目黒住区センター  第5会議室第6会議室
   ★前回とは違いますのでお間違えのなきよう
住所:目黒区中目黒二丁目10番13号中目黒スクエア内
   最寄り駅:東急東横線・東京メトロ日比谷線 中目黒駅から徒歩10分
   電話番号:03-3719-0694
基準受講料:2,000円
第3回:呼吸の深層筋へのアプローチ、すり足の基本、『鶴亀』を謡う
連絡先:info@watowa.net 

●浪曲ワークショップ
10/29(木) 19:00-21:00
講師:玉川奈々福
第三回:啖呵芸その3 ちょうど時間となりました。
会場:カメリアプラザ第一和室
基本受講料:2000円(別途教材費:CDと台本1000円or音源ダウンロードと台本:500円
予約:プロジェクト福太郎 090-7001-6867 tamamiho55@yahoo.co.jp
※満員 

ダンスワークショップ 第2回 ご報告(蜜月稀葵)

イナンナダンスワークショップ

今回は、身体をしなやかに使う体操 part 1 ~下半身、背骨、骨盤、踵~という事で。

○地球の踏み方
・拇指球(拇指球で地中に釘を打ち、足の裏全体で地球をおさえるイメージです)
・つま先、膝の向き
・骨盤、仙骨、背骨の位置
を意識しながらパラレルでの屈伸(プリエ)。
動きになれた所で、森ちゃんのタイコに合わせてプリエです!


○シュメール語とダンス
今回、高井先生に4つ単語を教えて頂きました。

・奏でる du12 ドゥ to play (a music instrument)
・歌う Air3 シル to sing
・踊る gu4-ud グド to dance
・冥界 kur-nu-gi クル・ヌ・ギ 地・ない・帰る 帰ることのない地 netherworld = 冥界


◇高井先生が書いてくださった、文章をずっと眺めていましたら、、ポっとダンスと舞について閃きました。
その事をみなさまと共有しました。


○「ドゥ」をダンスににしてみました。
https://www.youtube.com/watch?v=5CGV-GiZ6sc
※限定公開。みなさまの許可を頂いております。

儀式みたいで好きです!

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次回は、10月18日(日)17:00~19:00(2H)
身体をしなやかに使う体操 (上半身、背骨、肋骨、肩、肩甲骨)を取り入れながら、シュメール語を使ってダンスしてみたいと思います。

奈々福のガチンコ浪曲講座第二回ご報告(玉川奈々福)

93019時より、亀戸駅前のカメリアプラザ和室にて、第二回講座を行いました。

参加者27名さま(欠席3名)。

 

浪曲は節(歌うような部分)と、啖呵(会話や説明の部分)で物語を織りなしていきますが、今回の講座では、節からは入らず、啖呵のお稽古から入っております。

なぜか。

浪曲というと、広沢虎造先生みたいな、ダミ声でうたうものだという先入観がある方が、おられます。

もしくは、すごい力強い、力んだ声を出すものだ、というイメージがあります。

最初から、そういう声を出そうとしては、ノドを傷めてしまう可能性があります。

まずは、肩の力は抜いて、お腹の底だけはしっかり支えて、太く、まっすぐ、素直に声を出すお稽古をしたい。

そのためには、三味線に載る声を一義とする「節」のお稽古より、腹と息を意識しての啖呵のお稽古のほうがよいと判断しました。

「啖呵って、ただ言葉を云うだけでしょ」

と、思っていた、かもしれない。

ところが、前回。

「ああなりましてこうなって、こうこうしかじかで、こうなった」

というだけのフレーズが、いかに「言えないか」を体感してもらいました。

二回目の今回のお題は、ちょびっと難易度が上がりました。

「江戸は神田お玉が池北辰一刀流の道場を開いております、千葉周作の門弟平手造酒」。

これを息継ぎ無しに、一息で、声を張り、ゆったりとした抑揚をつけながら言ってもらう。

すんなりできた人もいれば、息が全然続かなかった人もいる。

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そして、語り芸の基本テクニック、かみしもの使い方、声の演じ分け方などをご伝授。

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それから、初めて、「三味線にのる声」を出すお稽古として、「阿漕ヶ浦」の外題づけの節を、男性女性に分かれて、うなってみてもらいました。

浪曲では基本ありえない「合唱」状態(笑)。

 

最後は、安田先生が、「イナンナの冥界下り」とシュメール語の説明をされ、先生ご指導のもと皆さんで、「アンガルタ、キガルシェ、ゲシュトゥガニ、ナーアングブ!」を大きな声で!……浪曲習いに来て、なんでやねん。

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発声ワークショップ 第2回

イナンナプロジェクトの「発声のワークショップ」の第二回が開かれました。講師は指揮者の香西克章さん。

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9月24日(木)
@下目黒住区センター レクリエーションホール
参加された方は19名。

イナンナ・プロジェクトは、世界最古の神話を日本の古典芸能の手法を使って上演しようというプロジェクトですが、しかし日本の古典芸能だけに限定せずに、さまざまな発声法、からだの使い方も探求していきます。

このワークショップは、指揮者で、しかも声の専門家でもある香西さんによる「発声ワークショップ」で、ただ声を出すだけでなく、それを解剖学的に説明したり、さまざまな身体ワークを行いながら進みます。

第2回は、まずは第1回の「身体を知る」の復習からはじめ、「頭」 「首」 「背中」 「喉」 「顎」 「目」 「鼻」 「耳」 「口」 の特性 機能 使い方を考えました。

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そして、5つの母音で発声し、グレゴリオ聖歌を歌いました。

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贅沢なことに途中、高井先生にシュメール語についてレクチャーして頂いたり、精神科医の大島先生に心についてお話し頂きました。

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